演劇小道具工房

【演劇小道具工房/第16回】そこは惜しむべきじゃない! 小道具部ありがちな失敗エピソード③ ~節約~

こんにちは、シンディこと大向しんじです。ここ『演劇小道具工房』ではお芝居で使える小道具のつくり方や、過去に作った小道具の紹介、そのほか小道具制作についての交々を解説します。

第16回となる今回は 「小道具部ありがちな失敗エピソード・その③~節約~」をお届けです。

小道具部ありがちな失敗 ~節約~

悩める小道具作家の皆さんこんにちは! 突然ですが、こんなことありませんか?

安価なネジを使ったらあっという間にネジがナメてしまったり(ネジ頭の溝が潰れて無くなってしまうことをナメると言います)。

これまた安価な縫い糸を使ったら、布に詰まるわ絡まるわ、針に通すのも一苦労……。

それもこれもみんな「節約」のせい……。予算が……予算が無いの……! 貧乏が……貧乏がいけないの……? お金の花は真っ白なのにどうしてその根は血の色をしているの……? ……なんだか世知辛い話になってきましたね……。

とはいえ、限られた予算を工夫と技術でそれ以上に見せることができるのも小道具部の面白さの1つだと思います! どうせならコストダウンも前向きに!

そんな前向きコストダウンのために、「予算不足の小道具部でもこれはケチらない方がいい!」ポイントをご紹介です。

消耗品系の道具は要注意

とりあえず冒頭でも言及しましたネジと糸です。小道具工房においてケチるべきではない二大巨頭だと思ってます。特別高価なものでなくてもいいので、ネジと糸はきちんと使いやすい物を選びましょう。ホントに。

「安価な物は全部ダメか」って言うと必ずしもそんなことはないと思います。が、僕の場合は糸、ネジ、クギなど消耗するツール系は安さで選んで失敗した経験があります。それから結局「これ買って使えなかったら痛いな……」と思うようになり、それらは専門メーカーの物を使うようになりました。

世の中「安く良い物」も存在しますが、見つけるのはなかなか大変です(見つけたらこっそり教えて下さい)。だいたいの物は「お値段なり」ですが、もしもそれが実用に耐えない場合、消耗品系のツールは作業そのものへの影響が大きく出ます。

消耗品系ツールは使用量が可変なのでコストダウンをしたくなる場合もありますが、むしろ予算がタイトな時ほどよく考えて、使いやすい物を選んだほうが良いと思います。

専門メーカーのツールは作業効率も上がる

特に手縫い糸はメーカーの手縫い糸を使うほうが作業効率の面でも圧倒的にいいです。フジックスさんなどから「手縫い糸」として販売されている商品は布の滑りや針の通しやすさ、糸の縺れにくさなど実感しやすいです。非メーカー品の糸を使った後で使うと「餅は……餅屋……! 」と感動します。

劇団とかだと特に、特別裁縫が得意じゃないけどメンバー内でいつのまにか裁縫担当になっている人がいたり、逆に得手不得手に関係なく劇団共有の裁縫道具を全員で使うことがあったりします。またご家庭と比べて演劇の現場における縫い物は「開演5分前にボタンが取れた! 」「次の出番までに直さなきゃ! 」など緊急の場合であることも多いです。

そんな時に糸の通しやすさ、もつれにくさ、扱いやすさはとても有難いポイントになります。劇団で常備しておく裁縫用具の糸、買い替えや買い足しの機会にはちょっと思い出してみて下さいね。

ちなみに「ミシン糸」として売られている糸は撚り(糸を作るときの繊維のねじり)方向が違います。これはミシンが縫うときと人の手(右利きの場合)が縫うときで糸にかかる力の向きが違うため。ミシン糸を手縫いで使えないわけではありませんが、糸切れや縺れが起きやすくなるので「あら、こっちのミシン糸とやらの方が大容量でおトクじゃない? 結局は糸なんだから縫えるでしょ?」と思っても、手縫い用の糸を使う方がおすすめです。

小道具部的 上手に節約

以前『衣装のつくり方』という連載を書かせて頂きました。その記事内で「いろんな座組を経験してきたけど時間や予算やスキルなどの条件は本当に様々」というような一文を書きました。

そう、書きました、が……「予算」に関しては、そもそも余裕があることなどきわめて稀です(暴論)。仮に余裕があったとしてもコストは抑えるに越したことはありませんしね。

そして全体の予算を削るとなった場合、衣装部や道具部の材料費は削減対象になりやすいです。

ただそれはそれだけ予算カットを技術や工夫でカバーできるポテンシャルが高い分野だからなのだといえます。機材費や会場費はちょっとでも足りなかったらそもそも使えなくなっちゃいますし、代わりの選択肢も限られますしね。

だから仮に衣装小道具部の予算が削られたとしても「断じて! 軽んじられてる訳では無いのさ! 」と全世界の小道具部さんに伝えたいし「……と小道具部は信じてます! 」と全世界の制作部さんに伝えたい。なんの主張だ。

主張はさておき、冒頭でも言ったとおり「限られた予算で使える資材は? 」とか「どうしたらチープに見えない質感を出せる? 」とか、そういうところに知恵を絞るのも小道具作りの面白さの1つだと思います。

節約するところはする! でも「ここはケチれない! 」と言う所はしっかり押さえる! そうやってセツヤクとも上手におつきあいしていきましょう!

おまけ

あるあるだと思います。

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参考:株式会社フジックス
執筆:大向しんじ
(c)Rrose Sélavy

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