この数年、正直なところチューハイを呑む機会はあまりない。
今を遡ること数年前(すなわちコロナ禍前)、毎月(しかも10年間連続!)、劇作・演出に追われ、本番当日はミュージシャンとしてステージにも立っていた(厳密にはステージ下でキーボードを弾いていた)訳だが、ほぼ毎回、公演が終わって控室に引っ込むやいなや、近くのコンビニエンスストアで仕入れてきた季節限定フルーツ味の激甘・高アルコール缶チューハイで“喉を潤す”という体(てい)の人工的神経麻痺状態を生み出して・・・もとい、高ぶる神経を癒したものだ。
せっかく書いた台詞が何処かに行ってしまったり、せっかく付けた演出が無きものとされていたり・・・本番とはこうした魑魅魍魎が暗躍する危険な空間なのだ。分かっちゃいるけど、「何のための稽古だったの?」といった愚痴の一つも言ってみたくなるのが人情ってもんでしょ? まあ、勢い余ると役者を叱責するなんてことにもなりかねない。だから意図して神経を朦朧とさせることで自らの自我を静めるのだ・・・それはまるで祟りを封印する陰陽師の如く。
さて、数年越しの愚痴はこれぐらいにするとして・・・“仕事の愚痴”ってのも居酒屋的でしょ? ここは一つ、それも含めて“おうち酒場化計画”ってことで(笑)
まあ、兎にも角にもこうした鎮魂の儀式の必要がなくなった自粛という名の冬眠期間にすっかりチューハイなるものを呑む習慣がなくなってしまったという訳だ。
少なくとも高アルコール激甘缶チューハイの必要性を感じることのない生活に入って久しい。
そんな折に編集部に届いたのが「キリン本搾りTM」3種。
私に缶チューハイ? もしかして、高アルコール激甘缶チューハイだったりして・・・
呑む前こそ、まあ、正直なところ「大丈夫かな?」などと頭を過ったりなんかもしたのだが、結果、そんな心配は杞憂であったことをここに記しておこう。
プレミアム 4種のレモンと日向夏
レモン味を呑んだ第一印象は「知性のある味」。
まあ、自ら言っておいてなんだが、「レモン味のチューハイに”知性”ってどういうこと?」って話ではあるのだが、いわゆる”品のある味”よりもちょっとシャープな感じというか、”冷静さ”を感じる味とでも申しましょうか。この”冷静さ”は呑む人間の話ではなく、チューハイ自体に内在する”冷静さ”とでも言ったところでしょうか。
なるほど・・・「特徴の異なる4種のレモン果汁に、ライム、穏やかな酸味の宮崎産日向夏をブレンドし、レモン本来のおいしさ、上質な果実味を実現しました」だそうな。
”レモン本来のおいしさ”といったものが一体どのようなものなのかは正直よく分からない。だって、アニメのワンシーンに触発された”幼少期の無謀な試み”以来、レモンをそのままかじる経験からは久しく遠ざかっているし、ましてや数種類の食べ比べ、”利きレモン”なんてことをやった記憶はない。だから”レモン本来のおいしさ”について語る資格がないのだ。
ただ、何故だか私がこのレモンチューハイに感じた”知性(ある味)”と”冷静さ(を感じる味)”に、”ライム”と”宮崎産日向夏”という2つのキーワードが関係しているように思えてならないのだ。などと言いつつも、実のところ、これまた宮崎産日向夏なるものの味もいまいちピンと来ていなかったりすることをここに告白しておこう。ほら、大方の人間にとって結局、こういうのは気分だから。とは言え、「上質な果実味」には同意。この”上質さ”と感じる何かを、私は”知性” ”冷静さ”と感じたものと思われる。
プレミアム 3種の柑橘とシークヮーサー
で、レモンもいわゆる甘味のない大人の味だが、シークワーサーは更に追い込んで苦味を強くした感じ・・・というか、いわゆる”皮の苦み”感ですなこれは。しかもこの苦味、飲み込んだ後に立ち上がってくる感じ?がこれまたなかなか”粋”なんですよねえ。
えー、なになに・・・「皮ごと丁寧に搾った沖縄県産シークヮーサー」だと! 柚子でもなんでもこの”皮の苦味”ってのが、酒や料理の絶妙な味と香りを引き出してくれるんですよねえ。
まあ、「皮の苦味は大人への入り口」だったりなんかもしますからねえ。ええ、ええ。そりゃもう大人の味ですよこれは。てか、そもそもお酒なんで子供が飲んじゃいけないんですけどね(笑)
グレープフルーツ
グレープフルーツはまさに生搾りグレープフルーツといった趣の”生搾り感”たっぷりのお酒。これもいわゆる激甘缶チューハイの類とは本質的に目指す方向が異なるお酒。
昔、超若かりし頃、居酒屋で生搾りグレープフルーツサワーを頼むことに凝ったことがあるが、まさにあの感じ。何故、若造があえて値段の高い方のグレープフルーツサワーを注文したのか? そりゃもう、あの銀色の絞り機?に半分に切られたグレープフルーツをねじ込み回すことで単なるグレープフルーツサワーとは一味違う、いや、次元の異なる世界が目の前(舌の上? 喉の上?)に展開されるあの感じ! ちょっとぐらい高くても注文しますわな。それが人情(酒バカ限定)ってもんでしょ? そんなことで激安居酒屋のグレードが一段高くなる訳ですよ。体感的に(笑)それから20年以上経ちましたが、今度はそれが”おうち”で楽しめるとくりゃ、試さない手はないでしょ?
なんかおつまみに「もちチーズ焼き」とか「フライドポテト」とかそういった大衆居酒屋チェーン店にありがちなジャンクなメニューが欲しくなってしまうのはちょっとしたノスタルジー。
さて?タルコフスキー監督ならばこの手の”ノスタルジー”をどう描くのだろうか? その世界観に欠かせない”水”の代わりはとりあえず”生搾りグレープフルーツサワー”として・・・そして最後にはベートーベンの第九(歓びの歌)が鳴り響く中、僕は火ダルマになってしまうのだろうか? こりゃ、とんだノスタルジアだ!(何を言っているのか分からない方は、アンドレイ・タルコフスキー監督『ノスタルジア』をご参照ください)
甘くない美味しさ
まあ、いくら美味しくとも”過度な飲み過ぎ”は”火ダルマ”、もとい、少なくとも”酒焼け”程度には焼けてしまいかねませんので、皆様、くれぐれもお気をつけ遊ばせ! などと言ってはみたものの、個人的にはシークワーサーが好みかしらん?などと思っている自分もいたりして。
まあ、いづれを手にとっても”はずれ”はないと思います。
ただ、激甘缶チューハイを御所望の方には「甘くな~い!」などとあらぬ批判を受けそうなので、老婆心ながら一言言わせて頂くのならば、「甘くないから美味いのですよ!」という事であります、ハイ。いわゆる大人の味です。
と言いつつも、「甘いやつなら飲めるんですけど・・・ウィスキーや焼酎はまだハードル高くてえ」なんていう、ちょっぴり背伸びをしてみたいお年頃のあなたにこそオススメかも知れません!
お試しあれ!
キリン本絞り TM
今回ご紹介したお酒は「キリン本搾りTM」シリーズ。原材料は果実と酒だけ! 飲む前に缶を逆さにすると、より果実感を楽しめます。
価格はオープン。すっきりした味わいが特徴なので、ぜひ食事に合わせてお楽しみください。お花見にもぴったりです!
関口 純/音楽家&劇作・演出家
大衆社会という名の戦場で、その“住処”を鉄壁の要塞と化すことに情熱を注ぎ、かつ、“一人呑み”という名の作戦会議において“食”という名の世界地図を広げることを以ってして戦士の休息とする文士、またある時はミューズの女神に色目をつかいながらもバッカスの宮殿で音楽を奏でる宮廷楽士を下野して地上に舞い降りた吟遊詩人。
芸術を生業とする一家に生まれ、幼少よりピアノ、作曲、演出などを学ぶ。その後、日本テレビ音楽(株)顧問(サウンドプロデューサー&事業開発アドヴァイザー兼任)、楽劇座芸術監督、法政大学地域創造システム研究所特任研究員など。音楽から演劇、果ては研究活動に至るまで「止まれば死ぬ」を人生のコンセプトに“常に”吟遊詩人的人生の真っ最中。
※本文中の価格は希望小売価格・税込みです。
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