Music ライフスタイル 文化村スタジオ 連載

創造とは生活なり 〜機材の変遷あれこれ〜

歴代MacとAlesis a-dat&S-VHSのマルチテープ

歴代MacとAlesis adat&S-VHSのマルチテープ

音楽制作にコンピューターが使われる様になって久しい。
最初に手に入れたのはApple mac LC-2というコンピューターで、シーケンスソフト(今のDAW)はVisionでした。

当時はPerformerかVisionの2択と言って良い様な状況で、私はVisionを選択しました。MIDIインターフェイスも1in 3outぐらいの簡易的なものだった様に記憶しています。それを2台つないでAKAI S1000やRoland JV1080、JUNO106、TR909、JD800、Yamaha SY77、Prophet5なんかをコントロールしていました。

基本、マスターはDAT。お笑いライブなんかの音楽をやったりした時には「カセットテープかMDで納品して欲しい」なんて注文もありました。理由は会場にDATが無いから。

時は過ぎ去り、とは言ってもわずか数年後、コンピューターはスケルトンブルーカラーのmac G3に代わり、MIDIインターフェイスも1Uラック8チャンネル仕様の本格的な物に。シーケンスソフトも発売したばかりのVision DSPというハードディスクレコーディングが出来るタイプにバージョンアップしたまでは良かったのですが・・・発売直後にバグを残したままメーカー倒産・・・まあ、しばらく使い続けましたが。

このG3期は大手レコーディングスタジオでの仕事なんかもあったりして、仕込み(打ち込み&シンセの音色作り)はプライベートスタジオ、それをYamahaのデジタルミキサーO2R経由でAlesis adatへトラック別にダビングし、スタジオにはS-VHSのビデオテープ(adatで使用するメディア)だけを持っていくというスタイル。

ただ、1曲50トラック以上使っていたので、2曲分を持って行くにしてもテープの本数が尋常じゃ無い。と言うか、厳密には本数よりも重さの問題。で、そんな時はタクシー1択。

Alesisのadat&コントローラーBRC。使う機会こそないものの、adatは今でも3台所有。

ある日、朝の9時から大量のS-VHSテープが入った今にも破けそうな紙袋を下げて、麹町の日本テレビ別館サウンドインまで行ったのが昨日のことの様に思い出されます。さて、それから23時間ぶっ通しの過酷なレコーディングが始まる訳ですが・・・それはまた別のお話。

G3期にはシンセサイザーもちょっと様変わり。Nord lead 2 が打ち込み用のマスターキーボードとなり、音源モジュールE-mu Proteusも追加され、サンプラーもS1000からE-mu E4になります。ミキサーもMackie32ch8BusからYamaha O2Rへ。O2Rは2台連結させて使っており、デジタル接続されたAlesis adatは3台連結の24トラック仕様。当時、仕事で音楽をやっている人の定番セットです。ほぼ、どのミュージシャンのプライベートスタジオもそんな感じでした。ProToolsも実用に耐えうる様になってきた頃でしたので、そちらに移行する人たちもチラホラ出てきた頃です。

更にその後、コンピューターはmac G4へ進化。そちらの導入にあわせてシーケンスソフトもPerformerへ。それ以前、Cubaseも持っていたのですが、今一つ自分には合わない様に感じて、結局、使いませんでした。

楽劇座初期(2010年)のホール公演での音楽の仕込みはこのG4セットを使用しています。

で、2013年に自宅を新築したのを機にimacを新調し、それに合わせてシーケンスソフト・・・と言うか、もうこの頃はDAWソフトですね(って言うか、もっと前からか!)・・・はLogic proになりました。楽劇座でのほとんどの楽曲はこのシンプル極まりないセットで制作されています。音源もほぼ内部音源で、所有していたシンセ類は劇場での生演奏に使用されることになりました。すなわち、仕込みはほぼ外部の音源を使うことなくLogic proのみで行い、そのベーシックトラックに生演奏でProphet5やA R P Odyssey、ボコーダーVP-330を重ねてライブ演奏するといったスタイル。

それにしても、こうして改めて機材の変遷なんぞを振り返ってみると、「些か隔世の感がありますなあ」などと年寄りじみたことの一つでも言ってみたくならないでもありませんが、”それじゃ、今はどんな感じ?” といった意味も含め、以下はスタジオ近況報告のようなものであります、ハイ。

時は2020年、いわゆるコロナ禍以降、あちらこちらで置きっ放し・・・もとい、使用していた全ての所有機材を集結、新規機材も各種導入し、録音・配信などのレコーディングに特化した環境を新たに構築したのが文化村の秘密基地、通称“文化村スタジオ”という訳であります。

アナログシンセサイザー、リズムマシーンのほとんど全てをメンテナンス。更に往年の名機ARP2600、minimoogも追加され、昨年、2021年からはメモリやストレージを増設したmacを新調、合わせてProTools/Ultimateを導入。ミキサーも大型のO2R2台から小型のSSL Sixに変更。なかなか快適で無駄のないシステムです。

スタジオ構築にあたって最も気をつけたのは、「いわゆるスタジオにはしない!」という点です。具体的には、“創作”と“生活”を分けず、仕事場=遊び場<秘密基地>にするということを念頭に置きました。

結局のところ、子供の頃に発揮した“ワクワクを伴った創造性”に勝るものなしというのが、今までの半生で得た大きな気付きです。

大人になんかなってしまうと、“他人の目を気にして“と言うよりも、”他人の目側に立ててしまう“ようになってしまうのですよ・・・悲しいかな。子供の頃は良くも悪くも”他人の目“側からの風景を想像できない訳です。

そうした、大人から見れば幼稚な子供の特質は、創造性を発揮するという観点からはとても重要な気がするのです。

大人は想像力には長けているが、創造性は著しく乏しい。

要するに、私は楽しく生きたいのです。

秘密基地で“今日の遊び”をワクワクしながら創造し続ける立派な子供・・・もとい、大人でありたいのです。

と、まあ、そんな訳で、今後も音楽、演劇、研究問わず “創造と生活”にまつわる思い出、各種創作技術、スタジオ機材、本、レコード、おもちゃ? 等々の各種エピソードや気づきの数々をお話していこうと思っています。

要するに、創造=生きること=日々の気づきなんですよ。

すなわち、創造とは生活そのものなのです。

執筆・撮影:関口純
(c)Rrose Sélavy

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