Music 文化村スタジオ 連載

TR-909 〜文化村スタジオの仲間たち③〜

Roland TR-909
「その音を聴いたことがない人は存在しない」と言っても過言ではない、
ダンスミュージックには欠かせないリズムマシン。

これは確か、20代半ばぐらいだったかなあ・・・当時、新小岩にあった中古楽器店で16万円ぐらいで購入したもの。真っ赤な“Roland”ロゴ入りの黒いフライトケースなんかも付いたりしていて“お値打ち価格”。

とは言え・・・この数年前、TR-909は2万弱ぐらいで叩き売られていたのだが・・・それにしても、いつからこんなに高騰したのだろう? 今なんか30~40万円ぐらいになってるでしょ?

まあ、使ってみるとこれがなかなか良い感じで、結構いろんなところで使ったし、今でも使っている。一時期はクリック代わりに、まず4つ打ちを入力して、それをループさせながら曲を作っていた程。それ以前は譜面に書いてからの打ち込みといったスタイルだったのだが、以降、クラシック系以外の作曲は基本、作曲と同時に編曲(打ち込み)というスタイルが多くなった。まあ、これは仕事の場合、どうしても締め切りの問題が付いて回るので、少しでも早く完成させるための策だったりもする。

最近はまた譜面に書く様になったが・・・最近、過去の自分を再検証しているので“敢えて“そうしているのだが・・・音楽と自分がどう関わっているのかを譜面を通して再検証している感じ。

まあ、それは兎も角、レコーディングに関して言えば、私の所有しているアナログ系機材の中で一番使用頻度が多かったのが、このTR-909であることは間違い無かろう。

購入後、一番最初に使ったのが、当時所有していたJUNO-106とのコンビネーションで作ったお笑いライブの音楽。当時、タモリさんの番組なんかにちょくちょく出演されていたお笑いコンビMANZAI-Cのライブで、オープニング曲やら、森くん(現在は放送作家・文化人として活躍されているらしい。元気かなあ?)が歌うジャニーズ風の曲なんかを作ったりしていたのだ。

特に、そのオープニング曲はTR-909とJUNO106、JV-1080、S1000・・・Roland +AKAIのサンプラー・・・という、如何にも90年代なセットで作られたものだが、Prophet-5やARP Odysseyなんていう存在感のある音(シンセサイザー)があるにも関わらず、敢えて若干チープ(良く言えば“軽め”)な音を使って作ったものだった。

その中でもTR-909の音色は(特にキックと金物。もちろんスネアもね!)全体に統一感を与えてくれていた。何気に“絶妙な加減の存在感”があるのだ。まあ、その辺りが世界中で重宝されている要因の一つだったりするのだろうけど、まあ、これなんかは本物を使ってみて初めて実感できる世界だ。実機にはサンプル音では体験できない“振動”の様なものがある様に感じられるのだ。そもそも音は振動だしね。

話は戻るが、この音源の制作中に思わぬハプニングが! 突然TR-909のキックが鳴らなくなり・・・と言うか、正確には“ブ〜ン”という音が鳴りっぱなしになり、どうにもこうにもならない状態に。それが本番1週間ちょっと前ぐらいの話で・・・西野くんや森くんが「素人的には、こんだけ(機材が)あるから、なんとかなるでしょ?とか思っちゃうんですけど、やっぱり違うんですか?」とか笑顔で言っていたのを、今でも昨日のことの様に思い出します・・・私は青くなっていました。修理に出しても間に合うかどうか。結局、本番2日前に修理から戻ってきて、なんとか小屋入りに間に合わせたという、ハラハラドキドキの1週間でした。

この話なんか、TR-909に代えがないのを象徴するエピソードだなあと思うのです。似た様な音を使ってもどうしても質感が違ってしまうので、他の音とのコンビネーションが全く違ったものになってしまうのです。意図した様に溶け合わないのです。まあ、ミキシングに要らぬ手間をかけさえすれば、それなりに問題ないレベルにはなるのでしょうが。

もちろん、最近は相当、技術が進歩しているので、その頃に比べればクローン製品もかなり良くなっているのかとは存じますが・・・。ただ、TR-808に関して言えば、同じRolandから発売されているTR-08も所有しているのですが、明らかに音の圧が違う様に思います。まあ、好みの問題もあるでしょうから、どちらが良い悪いという話でないことは言うまでもありません。

兎にも角にも、TR-909さえ鳴らしておけば、音楽が締まるのです。スタジオなんかの”それなりの環境”で聴いていると、下手をすると「別に他の音は入れなくても良いかなあ〜」なんていう気にすらなってしまう。危ない危ない。

要するに“良い音”なんですよ!

これも暫く(10年以上?)タムの一つが鳴らなくて、そこからはノイズしか出なかったのだけれど、一昨年、やはりsymplexの林さんのところに修理に出して見事復活!

そう言えば、今から20年ぐらい前、作・編曲を担当していた某歌手の楽曲で、ドラムパートは“TR-909の4つ打ちキックだけ(厳密にはクラッシュも若干)”といった曲をレコーディングしたこともあるが、普通にドラムの入っている曲と比べても全く遜色の無いリズムパートだったと思う。

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